エイベック研究所の武田隆氏の著書「ソーシャルメディア進化論」をいただいた。12年の歳月をかけて積み上げられた「企業コミュニティ」の理論と手法が紹介されている。ここでいう「企業コミュニティ」とは、企業が自社のウェブサイトに開設するソーシャルメディアであり、フェイスブックやツイッターのような外部のソーシャルメディアではない。フェイスブックやミクシィのような現実生活を拠りどころとするソーシャルメディアは、知人との連絡網として機能するが、つながればつながるほど息苦しくなり、匿名の自由な発言が成立しないという。しかし、著者の考えに反論するわけではないが、フェイスブックやミクシィでも企業は消費者とつながることができる。そこで成立するコミュニティーは、著者の志向するようなコミュニティーではないかもしれないが。「ソーシャルメディア進化論」に続編があるとしたら、外部のソーシャルメディアを活用する理論と手法を読みたい。その続編を書く機会は、すべてのマーケッターに開かれている。
ボストンコンサルティンググループが、線形ファネルから影響マップへの移行を提唱している。これまでマーケッターは、認知から購買に至る消費者ジャーニーを直線的なファネルとして捉え、そこにさまざまなタッチポイントを強引に当てはめてきた。その旧来モデルは、戦略、予算配分、コミュニケーションを簡便に管理できて有用だが、リソース配分やメッセージの誤りにより機会を逃すリスクがある。消費者の複雑なジャーニーに対応する柔軟なフレームワークとして、影響マップを提唱している。 It’s Time for Marketers to Move Beyond the Linear Funnel https://www.bcg.com/publications/2025/move-beyond-the-linear-funnel 影響マップは、ストリーミング、スクロール、検索、ショッピングを消費者の主要な4つの行動として挙げ、それらが認知から購買までの過程の複数の段階で重複して影響を及ぼしていることを整理する。タッチポイントの影響力は、注視度、関連度、信頼度で決まる。影響力とリーチを組み合わせ、タッチポイントの優先順位を考える。複雑なアプローチになるが、AIの活用により実行できるとしている。 旧来の線形ファネルでは、「認知獲得に有効なのはビデオ。ユーチューブで認知を獲得しよう」という発想になりがちだが、グーグルによるとユーチューブは購買プロセスの全体に影響を与えているという。注視度、関連度、信頼度のそれぞれで、ユーチューブは消費者に高く評価されているという。 The new rules of influence: Rethinking the consumer journey https://business.google.com/us/think/search-and-video/video-influence-on-consumer-purchase-decision-process/